昨年度のCSR報告書からの重要な進展は、 マテリアリティの特定でしょう。マテリアリ ティとは、組織が経済・社会・環境に大きな影 響を与えたり、ステークホルダーの評価や意思 決定に実質的な影響を与えたりする事項・項 目のことを指します。CSR情報開示の標準に なっているマテリアリティを特定したことは大 気社のCSR姿勢を内外に打ち出す意味で大き な一歩になります。特定に至る過程で、組織の 構成員が自社にとって何が重要なCSR課題事 項であるかを検討する機会があったようです。 その後、経営層による妥当性評価を経て、最 終的に10項目が選定されています。10項目 のうち4項目(労働安全、従業員の雇用と定着、 働きやすい職場環境、人材育成)は従業員や職 場に関わる要素ですから、従業員を大事にする 会社だというメッセージを伝える効果があるで しょう。ただし、若干気になる点は、大気社が 最も強みとする「気候変動への対応」がマテリ アリティに選定されなかったことです。選定さ れた項目の中でも「品質管理」と「客先要求に 対する技術力・商品力」の二つには重複する部 分が含まれます。いずれもグルーピング(まと め方)の問題ですので、若干の関連づけの工夫
が必要でしょう。例えば、「腐敗防止」は「コ ンプライアンスの推進」の中に含めて説明した り、「気候変動への対応」は「資源・エネルギー の効率的利用」の中に含めて説明したりするよ うに項目の中身と関連性について少し整理して みてはいかがでしょう。
環境マネジメントのセクションでは、今回か ら新たに環境会計※が掲載されるようになりまし た。環境に関する指標が多様化する中、環境会 計への関心や注目度は相対的に低下している感 がありますが、環境保全コストと環境保全効果 が明確に表示されたことは大いに評価できます。 また、労働慣行のセクションでは人権に対する 基本的な考え方が追加されました。「ビジネスと 人権」は国際的には盛んに議論されるようになっ ています。グローバルに事業展開する企業に とっては無視することのできない課題です。組 織内で人権尊重を図るだけでは十分とはいえず、 いまやサプライチェーンにおける人権状況の把 握が求められる時代です。今後は、こうした方 向性を持った取り組みの展開が期待されます。
麗澤大学 外国語学部 教授 企業倫理研究センター 前センター長
梅田 徹
氏第三者意見
企業価値や、中長期的な成長性を測るための要素として、環境、社会、ガバナンスといった非財務情報が ますます重要視される中で、当社は、よりわかりやすい情報開示と活動のさらなる深化を目指し、今回初め て、CSRの側面から重要課題(マテリアリティ)の特定と開示を行いました。多種多様なCSRのテーマの中 から、何に優先的に取り組むかをあらためて検討し、経営陣の共通認識として、それぞれの重要度の見える 化を行いました。まだまだ勉強不足ではありますが、今後はこれを生かし、さまざまなステークホルダーと どう向き合い、自社の企業価値向上や活動にどうつなげていくかを模索してまいりたいと存じます。
梅田先生には全体を通した視点から、日本政策投資銀行 竹ケ原様には特にマテリアリティ特定に関しま して、示唆に富むご意見を賜り、誠にありがとうございました。CSRに高い知見をお持ちのお二方にご助 言をいただけたことは、私どもにとって大きな励みとなります。今後とも忌憚のないご意見を賜りますよ うお願いいたします。
CSR担当役員 常務執行役員
中川 正徳
意見を受けて
※ 環境会計:企業などが、事業活動における環境保全のための コストとその活動により得られた効果を認識し、可能な限り 定量的(貨幣単位又は物量単位)に測定し伝達する仕組み
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